高圧受変電設備の年次点検とは?

電気

工場やビルなどで高圧受変電設備を使っている場合、電気事業法に基づき、年に1回以上の定期点検(年次点検)を行うことが義務付けられています。

この点検は単なる「形式的な作業」ではなく、電気設備の安全を守り、事故や停電を防ぐために非常に重要なものです。この記事では、私が電気主任技術者として関わっている年次点検について、実際の写真や現場の声を交えながら紹介します。

年次点検では何をするのか?

年次点検では、以下のような作業が実施されます。

・リレー試験:保護リレーが正常に作動するかを確認。

・ケーブル診断(耐圧試験):高圧ケーブルが劣化していないかを確認。

・機器点検:遮断器、断路器、変圧器などの状態をチェック。

・清掃作業:キュービクル内部に溜まったホコリを除去。

特にリレー試験は「いざという時」に確実に動いてくれなければならないので、入念に試験を行います。

点検に関わる会社と人

こうした点検作業は、電気保安法人と呼ばれる会社に委託して行うのが一般的です。
有名な会社としては、

・エレックス極東

・東洋テクノ

・エネサーブ

・電気保安協会

などがあります。

点検チームの構成(現場からの聞き取り)

保安会社の年次点検チームは大まかに以下のメンバーで成り立っています。

1. 社員
電験三種が必須資格。
チームのリーダーを担い、リレー試験やケーブル診断といった専門作業を担当。

2. 派遣スタッフ
元々は企業の電気主任技術者をしていたベテラン。
定年退職後に経験を活かして参加している方が多い。

3. アルバイト
主にキュービクルの清掃を担当。
実はホコリが絶縁性能を落とす原因になるため、とても大事な仕事。

作業員の方から聞いた話では、
「冬は着込めば耐えられるけど、夏の外仕事は本当にきつい」とのこと。現場で働く方々には本当に頭が下がります。

ケーブル診断の様子

ケーブル診断(耐電圧試験)は、

高圧ケーブルに数万ボルトをかけて、絶縁性能に異常がないか確認します。

実際に現場で使用している耐圧試験器。コンパクトながら高電圧を発生させる。

意外に思われるかもしれませんが、この装置は非常に小型で、単3電池8本で動作します。それでいて数万ボルトを発生できるのですから、技術の進歩に驚かされます。

リレー試験の様子

年次点検で欠かせないのがリレー試験です。 高圧受変電設備には「過電流継電器(OCR)」「地絡継電器(GR)」などの保護リレーが設置されており、これらが正しく動作するかを確認します。
試験では、リレーに模擬的に電流や電圧を入力し、所定の値で動作するか適切な時間で遮断器を動かせるか をチェックします。

リレー試験器を接続して、保護装置が正しく動作するかを確認しているところ

リレー試験器(多機能型試験装置) OCR-25CVG

リレー試験器の電源として、昔はわざわざ発電機を稼働させていたが、近年はバッテリーで代用出来るようになった為、作業性が向上しました。


この作業は「普段は眠っている安全装置を、年に一度“起こして”点検する」ようなもの。 実際に事故が起きたときに確実に動いてくれるよう、非常に慎重に行います。

点検を進める上で大切なこと

年次点検は必ず停電が必要です。そのため、工場の生産ラインや研究所の開発スケジュールとの調整が不可欠です。

電気主任技術者である私は、点検の日程を調整し、保安会社とやり取りし、点検後の改善計画まで責任を持って対応します。

点検が終わった後は、報告書をもとに不具合箇所を修繕します。

点検後に行うこと

年次点検が終われば終わり、ではありません。 点検結果によっては、機器の更新や補修工事が必要になります。
例:
・経年劣化した電力量計の交換
・絶縁抵抗値が悪化しているケーブルの更新
・古い高圧遮断器(真空遮断器VCBなど)の更新


点検 → 不具合抽出 → 修繕工事、というサイクルを回すことが、安定した電力供給のために欠かせません。

まとめ

・高圧受変電設備は年1回以上の点検が法令で義務化されている。
・点検では、リレー試験やケーブル診断など、専門的な試験を行う。
・停電を伴うため、生産・開発スケジュールとの調整が重要。
・電気主任技術者は点検の計画から結果確認までを担う。
・点検後は、不具合機器の交換や補修工事に繋げることが必要。
・年次点検は、設備の安全と会社の事業継続を守る大切なイベント。

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