設備設計や施工で「どのポンプを選べばよいか?」は悩ましいテーマです。
本記事では、必要圧力と流量からポンプを選定する手順を、実務の流れに沿ってわかりやすく解説します。
ポンプ選定の基本は「流量」と「揚程」
ポンプを選ぶうえで最も重要なのは、次の2つの条件です。
- 吐出し量(Q):どれくらいの流量の水を送りたいか
- 揚程(H):どれだけの高さ・圧力で送りたいか
この2つを明確にすれば、あとはカタログから最適なポンプを選ぶことができます。
ポンプ選定前に、必要な流量㎥/hと圧力MPaの要求仕様を明確にしましょう!
全揚程Hを求める
ポンプの性能は「圧力」ではなく「揚程(m)」で表されます。ポンプが水を送るために発生させるべきエネルギー(高さ)を「全揚程」といい、次の3つの要素の合計で表されます
$$ H=Hd+Hs+hf$$
| 項目 | 意味 | 備考 |
|---|---|---|
| Hd:必要圧力換算水頭 | 吐出先で必要な圧力を水頭に換算したもの | ・給水末端や装置入口での必要な圧力 |
| Hs:静揚程 | 吸込側と吐出側の高さの差 | ・地下ピットから屋上水槽など ・高低差がない閉回路ではほぼ0となる |
| hf:損失水頭 | 配管やバルブ・継手での摩擦損失 | ・配管径・長さ・流速で決まる |
圧力を揚程に換算する
ポンプの性能カタログは「圧力(MPa)」ではなく「揚程(m)」で表記されます。
そのため、まず圧力を揚程に直します。
計算式は以下の通りです:
$$Hd=\frac{P}{ρg}$$
ここで、
- Hd:揚程(m)
- P:圧力(Pa)
- ρ:水の密度(約1000 kg/m³)
- g:重力加速度(9.8 m/s²)
例:「出口で0.25MPaの圧力が欲しい」場合
$$Hd=\frac{0.25×10^6}{1000×9.8}≒25.5m$$
⇒ 圧力0.25MPa = 揚程25.5mとなります。
全揚程の計算例
たとえば、以下の条件のとき:
- 機器で必要な圧力:0.25 MPa
- 配管損失:1 m(目安)
- 吐出側が吸込より5 m高い
$$H=25.5+1+5=約31.5m$$
したがって、この場合は 全揚程 32 m 程度のポンプが必要になります。
吐出し量(流量)を決める
次に、必要な流量を決めます。
用途によっておおよその目安があります。
| 用途 | 流量の目安 |
| 一般給水 | 10~50L/min |
| 空調循環ポンプ | 100~1000L/min |
| 冷却水ポンプ(冷却塔) | 数百~数千L/min |
| 消火ポンプ | 数千L/min以上 |
単位は L/min や m³/h が使われます。
1 m³/h = 16.7 L/min です。
カタログで「揚程–流量曲線」を確認する
ここからが選定の実務ステップです。
ポンプメーカー(荏原、川本、日立など)のカタログには、必ず以下のような選定図が掲載されています。
- 横軸:流量(Q)
- 縦軸:揚程(H)
カタログ上で、先ほど求めた 必要流量Q と 必要揚程H の交点に近い型式のポンプを選定します。

例:必要条件が以下だったとします。
- 吐出し量 Q = 0.5㎥/min
- 全揚程H = 32m
この「Q=0.5㎥/min, H=32m」に最も近い点を通る65LPD 65.5Eのポンプを選定します。
ポンプ選定後に決まること
ポンプを決定すると、次の項目が連動して設計できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配管口径 | ポンプ吐出口径により決まる。 → 配管計画へ反映。 |
| モーター容量(kW) | ポンプ出力より決まる。 → 電気配線計画へ反映。 |
まとめ
ステップ①:全揚程(必要圧力+高さ差+損失水頭)を求める。
ステップ②:用途から必要流量を決める。
ステップ③:カタログの選定図から、ポンプ機種を選定する。
ステップ④:選定後に配管・電気設計へ反映する。


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