ネットワークの信頼性を高めるには、「冗長化(じょうちょうか)」が欠かせません。特に工場やオフィスなど、通信が止まると業務に直結する環境では、スイッチや回線の障害に備える構成が重要です。
本記事では、ネットワーク冗長化の代表的な3つの方式について、構成例・メリット・コスト感・導入事例を交えながら解説します。自社に最適な冗長化構成を選ぶヒントにしてください。
冗長化とは、機器や経路を二重化・多重化することで、どれか一つが故障してもシステム全体が止まらないようにする設計思想です。
方式①:単一スイッチ+光回線二重化
●構成概要
スイッチ1台に対して、2本の光回線を接続 光回線のみ冗長。スイッチ自体は単一で、故障時は交換が必要
●メリット
光回線の断線・障害には自動で切り替え可能 機器コスト・工事費が最も安価
●デメリット
スイッチ障害時に完全停止。技術者による交換・設定復旧が必要 プレッシャーの高い場面で即対応できる人材が限定されがち
●導入に適したケース
仮設ネットワークや小規模拠点 技術者が常駐している環境
方式②:スイッチ二重化+光回線四重化(完全冗長)
●構成概要
スイッチを2台に分けて、それぞれに異なる光回線を2本ずつ接続(合計4本)
スイッチも光回線も完全に二重化
●メリット
スイッチ・回線どちらが壊れてもサービス継続が可能 障害時に即時対応の必要なし。ベンダーに保守依頼ができる余裕がある
●デメリット
機器+光回線×4のため工事費や保守費が高くつく ネットワーク設計がやや複雑になる(ループ防止等)
●導入に適したケース
工場の中核ネットワークや、物流系、倉庫の基幹システム
方式③:スタック構成+光回線二重化
●構成概要
スイッチ2台をスタックケーブル等で1台として動作させる(仮想シャーシ構成) 光回線を2本引き、それぞれのスイッチに接続 スイッチ障害時は、残りの1台が継続して稼働
●メリット
高可用性+運用のシンプルさ(1台分の設定で運用可能) コアスイッチやPLC通信など、止めたくない装置群に最適
●デメリット
スタック対応のスイッチは高価。方式②よりもトータルコストが高い スタック障害や構成ミスに注意(設計・検証が重要)
●導入に適したケース
工場のDX推進やスマートファクトリーで通信品質を重視するシーン 本社・データセンターなど、インフラの統合性を重視する場所
各方式の比較

まとめ
ネットワーク冗長化は、「どのリスクに備えるか」「障害時に誰が対応するのか」「どれだけ費用をかけられるか」を整理することが重要です。
• 即時復旧が必須か?
• 現場にスキルを持つ技術者が常駐しているか?
• 設備投資にどれくらいの予算をかけられるか?